院長挨拶
私は心臓、血管病を専門とし、急性期総合病院勤務時代には心臓カテーテル検査・治療や、ペースメーカー植え込み、心不全治療を中心に、時には心肺停止後の方に対する脳低体温療法や心臓補助循環といった集中治療にも携わって参りました。
つい先ほどまで元気だった方があっという間に命を奪われることもあり、予防の大切さを痛感して参りました。心臓、血管病はご高齢の方に多い傾向がありますが、働き盛りの方でも過労やストレスが引き金になって突然発症することがあります。
動脈硬化は知らず知らずのうちに長い年月をかけて少しずつ進行し、何かのきっかけで突然動脈が詰まったり破裂したりすると、心筋梗塞や脳卒中、大動脈解離や大動脈瘤破裂といった命の危険を伴う心臓、血管病に至ることがあります。メタボや高血圧症、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群といった病気はみな心臓、血管病の「リスク」となり、動脈硬化を進めると考えられています。そのような生まれ持った体質に加え、喫煙や過食、運動不足、不眠、不規則な生活、過労、心労といった生活の乱れやストレスが重なると、心臓・血管病は発症し易くなります。
すでに心臓・血管病を経験されている方のみでなく、現在何も症状がない方でも、特にリスクを持っておられる方は、早い時期からできる範囲で生活改善、リスク管理を開始することが、将来の心臓、血管病を予防する上で重要です。そしてこの総合的な治療を行う場所として、急性期総合病院より、受診が容易なクリニック外来が適していると考えられています。
また、高齢化社会を迎え、認知症を持つ患者様が増加し、高齢の方のみの所帯も増加しています。高齢になるほど遠くの急性期総合病院への通院は困難となり、最悪通院が途切れてしまうこともあります。
入院、手術が必要となった場合、高齢の方ほど入院期間を短くして、認知症の進行を最小限に抑え、寝たきりにならないようにしたいのですが、一方で、早期に退院するためには安心して病気の治療が続けられる環境と、ご家族の十分なサポートを必要とすることが多く、独居の方や、介護されるご家族も高齢である場合には、安心して退院できないことも経験されます。
ご自宅にいる間にはできるだけ入院を要する状態にならないよう的確な治療が受けられ、且つ、退院後には速やかに必要な治療が続けられるような環境が求められており、現在、医師主導から多職種が連携する医療への変換と、急性期総合病院とクリニック(かかりつけ医)の連携強化が進んでいます。
かかりつけ医である当院では、会話を大切にし、共に考え、ライフスタイルに合わせてできることから少しずつ生活改善を提案、可能な範囲で食事、運動療法を行っていただきながら、最小にして最大の効果が得られる薬物療法を併用します。
通院が困難な方には、可能な検査、治療は限られますが、ご自宅へ伺ってできる限り治療を続けます。定期的に多職種カンファレンスを行い、医師のみでなく看護師や管理栄養士、理学療養士で患者様の情報を共有、院外施設の訪問看護、リハビリステーション、メディカルソーシャルワーカー、ケアマネージャーとも連携して、いち早く変化に気づき治療を行います。より高度な検査、治療が必要と判断される場合には、安城更生病院と連携して治療をお願いし、治療が終われば早期に退院ができるようサポート致します。
薬を飲む、検査や手術を行う、注射をするだけが医療ではありません。気軽に通院、相談ができ、安心して療養ができるような医療を実施することで、皆様の健康寿命維持に寄与したいと私たちは考えています。
尊い健康、命を守るため、今何ができるのか、何をしたら良いのか一緒に考え、できることから少しずつ治療を始めましょう。
渡辺洋樹